台湾の東側、標高3000メートル級の山々と太平洋に挟まれた町、花蓮。この町から南下していくと、水平に伸びた青い海を望む国道沿いに、たくさんの屋台と鉄パイプのステージ、そしてカラフルな模様の服を来た人たちが集っている一画が見えてくる。毎年、7月の第一週に開催される手作り音楽フェス「瘋市集」(クレイジー•マーケット•ギャザリング)は、台湾のヒッピー界隈が年に一度顔を会わせる大きな集会(ギャザリング)だ。
音楽フェスといっても入場料はない。出演者も遊びに来た人も皆、持参したテントを廃屋となったコンクリート2階建ての建物の中に広げ、海を眺めながら一緒に酒を飲み、音楽を聴き、食事を共にし、一週間共に暮らす祭りだ。夕方からは手作り雑貨屋、本屋、ケーキ売り、マッサージ屋など会場のあちこちに露店が立ち現れ、 外からの観光客も訪れてとてもにぎわう。ステージでは台湾はもちろん日本のミュージシャン達も演奏し、時には日台混成の即興のバンドまで生まれていた。
夜もふけると、たき火の周りでそれぞれが楽器を演奏したり、輪になって話をしたり、星空と波の音のあいだでゆったりと時を過ごす。こんな時間が一週間も続くと、そこにはもう皆が一緒に暮らす一つの村のような雰囲気すら生まれてくる。そんな不思議な台湾の祭りで出会った人びとの記録。