今月5日に福岡のライブハウス4次元で、インドネシアの首都、ジャカルタで活動するパンクグループ「The Marjinal」のドキュメンタリー【マージナル=ジャカルタ・パンク Jakarta, Where PUNK Lives - MARJINAL】上映会が開かれた。反転地のサノさん、Shesaysdistroのマサコさんの企画で、監督の中西あかねさんとジョグジャカルタから来日中のマージナルメンバー、マイクが来福するというまたとない機会を作ってくれた。
ドキュメンタリー自体は現在も撮影中であり、まだ完成ではないそうだが、それでもこの映画を観た時の熱量に圧倒された。なによりインドネシアの過酷な社会状況の中で奇跡のような音楽/共同体が存在していて、そこで仲間や元ストリートチルドレンの子供たちと一緒に助け合いながら暮らして/生きて/芸術を作り出している姿がまるで彫刻刀で掘られた木版画のように映像に刻み込まれていた。
ギリギリの経済状況の中で、共同生活を通して生きる術を学び、音楽によって不平等な社会システムへの怒りを表現し、互いに助け合い生き延びてゆく。このドキュメンタリーは、そこで語られているものよりも、彼らの行為そのものにレンズを向けることでPUNKの精神を映し出そうとしている。社会の不正義に向けて怒りの一撃を、そして自分たちの生活にむけて放つ自律と平等の精神を体現するリリックと音、リズム。そして同時に、モノ、技術、知識何でも分け与えてしまう彼らの態度そのものがPUNKの精神だ。
上映後のトークのQ&Aで、ある人が「マージナルの音楽は、パンクらしくないのでは」と質問したとたん、後ろから酔っぱらったがなり声で「何いっとるとか!これがパンクやろうもん!」と一人のパンクスが叫んだ。ひどく酔っぱらっていて結構めんどくさそうな人物だったが(笑)、少なくとも彼のその台詞だけは納得した。PUNKとは、音楽の形式ではない。PUNKが「不安定な社会状況の中で、人間の声を通じて、怒り、喜びを共有すること、そして仲間と共に生きること、そのために戦う覚悟を持つ」という倫理的態度であることはこの映画を観た人間であればひしひしと伝わってきたはずだ。
パンフレットの裏にマイクの言葉がこう引用されてあった。
「バンドはツールに過ぎない。自由を獲得するため。この国を変えるため、革命を起こすために僕たちにはやるべきことがある。守るべき友人がいる。だからこれだけ長い間、目標を見失わずに活動を続けていけるんだ。」
監督:中西あかねさんのHP →http://www.ayumi-nakanishi.com