ライプツィヒ滞在でお世話になったコミュニティスペース「日本の家」の運営者でライプツィヒの市民によるボトムアップ型都市再生の事例を研究している都市研究者、大谷悠さんの連載記事。人口減少と空き家増大という事態を、街に「住む/暮らす」という視点から考え、解決策を模索して来たライプツィヒ市民の人たちの空き家活用術「ハウスハルテン」というシステムが紹介されています。
•小さな未来の組織学 →「縮小都市」ライプツィヒに学ぶ「使用価値」視点の空き家再生
住宅問題は往々にして「不動産的価値」で語られることが多いけれど、それは土地や建物の所有者の目線の代弁であって、実際にその建物で暮らす人々の声やコ ミュニティの意見は反映されていないことが多い。ライプツィヒの空き家活用は、空いた家に無料で人々に住んでもらい、住む人はその建物を改修しつつ、メン テナンスの責任を引き受けるというシステム。大家は改修費の負担の問題、そして住む人は家賃やその値上げ問題があり、それを第三者的な「ハウスハルテン」 が仲介することでお互いが良好な関係を取り結んでいる。
面白いのは、不動産市場から見捨てられた家々を「使用価値」の視点から見直していくという考え方が、運動、そして制度へと展開していった経緯だ。 これが東ドイツで最初の民主革命の地、ライプツィヒの人たちの粘り強さかもしれない、とも思った。家や土地が不動産投機の対象とばかりなっている日本やア ジアではこのような考え方はまだ例外的だけれど、日本もこれから空き家増加率が増えていくことはすでに予想されている。人が住んで、暮らしを営んでこそ家 や建物は生きるのだ、という考えはこれからの「家」を考える時の一つの土台になっていくはず。
貨幣を介した交換価値ですべての価値を測る思考から、モノや行為の使用価値を再発見し、それらを再組織化する思考へ立ち戻ること。ライプツィヒは次の時代のまちや暮らしのあり方をいち早く試みて行く実験都市だっだように思う。