インドネシアの木版画コレクティブ「Taring Padi」の木版画「All mining is Dangerous」。福岡アジア美術館の企画展「一粒の希望-土地は誰のもの!?」展での展示にて。
集団制作で彫られ、署名もないこの大きな版画作品は、私たちにグローバリゼーションと資本主義がインドネシアの大地と海を舞台に何を行っているかを白日の下に晒す。
美しい森と海を削り取る機械、中央にはガイコツが積み重なったドリル。汚れた煙と汚水を垂れ流す工場群。そこに住む人たちを追いやるドクロの警官隊。楽器や旗、農具を持って抵抗する人たちの力強い目。破壊と抑圧の機構は悪魔的なイメージとして描かれ、具象化される。
ここでは、語られていることではなく、人間の行為そのものが描かれている。神聖化されたアーティストの作品に出会うのではなく、各地の彫り師たちの「複数の眼差しが捉えた出来事」が刻まれた版画世界の中を見ることで、不均衡かつ一方的な関係で閉じられていた世界と自己の連関を想起させてくれる。そして、あなたたちと私たちがイメージする世界の姿を「つながりある共通のもの」として再び獲得することを可能にしてくれる。
今、アジアの中で版画運動の交流が起きているけれど、それは異なる集団のまなざしと掘る技術の互恵的な交換と連帯に根ざしているように思う。