Taring Padiの創設メンバーでアーティストのUcupが、週末に市内で壁画を描いているので来なよ、というのでバイクで山から下りて来た。ジョグジャカルタの美術大学Institute Seni Indonesiaの近く。構内を通り抜けて行くと、ダンスや演劇、演奏の練習をしている学生たちがたくさんいていかにもアート系大学らしい。田んぼが広がる集落の入り口付近で、10人くらいの黒シャツの男達が壁画を描いている。Ucupは脚立に足をかけながら、壁に向かって筆を走らせている。壁を黄色に塗り、 その上から下絵を元に手際よくチョークで下書きし、黒ペンキで塗っている。冗談を言い合ったりしながらも、ときに皆が黙々と壁に向かい手を動かしている。「どうやってこの壁を見つけたの」とUcupに聞くと「これは今年3回目になる村の芸術祭のひとつなんだ。村のリーダーの許可をもらって描かせてもらっている。ここは美大に近いけれど周囲のコミュニティと大学との関係はまだ希薄だ。僕らはアートを大学の外に持ち出して繋げたいんだ。ここらへんには他にもたくさん壁画があるよ」と答える。
そうして小一時間皆の作業を眺めていると、2つの大きな男女の顔が壁から浮かび上がってきた。その両脇では若いメンバーたちが背景を描いている。左側には山、畑、森、右には地引き網漁をしている裸の男達の絵。そして中央には工場、都市の黒い影。産業と自然のはっきりと際立った対立。TaringPadiのチーフにはこの2つの異なる世界へのイメージが明確にある。自然と調和した農民の暮らしは単なるユートピアだと言えばそうだろう。けれどもそれは都市の、廃墟の壁に描かれた過去の情景であると共に、未来へのイメージでもある。産業/自然、都市/農村、、想像力の批判的弁証法の2つの項が緊張関係を孕みながら壁面に現れる。そして、大きな瞳をまっすぐに見開いた農民の男女の顔。私たちが壁画に相対するとき、同時にこの4つの眼に私たちは眼差しを投げ返される。「あなたはどちらの世界をつくるの?」この描きかけの壁画の女性の大くて黒い瞳を見ながら、僕はそう問われている気がした。
Since Ucup who is one of the original members of Taring Padi (a legendary woodblock printmaking collective in Jogjakarta ) told me that they would start making a mural painting in the city. I went down from the mountain to see their ongoing project. I enjoyed seeing the process of their grate works being realized on the wall.