台南、能勢興のなかで一番お姉さんのYui。今回のフェスの全体の運営のマネジメントをしていて、ボランティアをまとめたり、厨房の管理、露店の出店者たちとの交渉と一日中あちらこちら走り回っていて、とてつもなく働いていた。
台南家族の彼ら/彼女らは普段はのんびりしているように見えるけれど、一旦何かを始めるたり準備したりすると別人のように動きはじめる。休む間もなく仲間 と一緒になって黙々と仕事をこなしてゆく。朝のミィーティング、掃除、食事の準備、出演者や出店者とのやりとり、警察との交渉、etc... 外から来た僕のような人間があのフェスで居心地の良く過ごせるのは、彼ら彼女らの不休の働きがあったからだ。
Yuiとは3年前、素人の乱の松本哉さんのつながりで、台湾の反核運動で活動していた日本語翻訳家、今は亡きTanさんの住むシェアハウスに遊びに行った時に初めて出会った。気っ風が良く、面倒見の良い姉さんという雰囲気で、僕が台南のTanさんやYuiの家でのんびりしていた時も、ご飯や果物をいつも「タベル、タベル!」といって差し出してくれたり、台南の海岸や夜市に車で連れて行ってくれた。台南でアートスペース、ゲストハウスを作るという計画をTanさんとしていたけれど彼が亡くなった後は、Yuiがその計画を引っ張っていって、とうとう実現させた。
昨年のYuiとBaoPaoの結婚式(台湾で最初の同性愛カップルの結婚式)のお祝いに行った時も、翌日にはすぐに朝ご飯を作ってくれてみんなに食べさせていたり、本当に自然にいつも何かを他人に与えているような女性だ。Yuiと話したり一緒に歩いたりすると、彼女の言葉やまなざしにおおらかな風が吹いているのがわかる。
昨年、彼女がアクンたちと東京に来た時、横浜にある大野一雄舞踏研究所で開かれる大野慶夫氏のワークショップに参加したいと言ったので連れていったことがある。Tanさんが日本の暗黒舞踏を紹介してくれて、どうしても参加してみたかったと話ていた。ワークショップの時には涙を大きな目にためながら大野慶夫氏の一挙手一投足を追っていた。帰りがけ、嬉しそうな顔でタバコを一服していた姿を今でも覚えている。同い年だからだかもしれないけれど、僕はYuiに会うといつもなんだか懐かしい幼なじみに会ったような気持ちになる。向こうはそんなこと思ってないとは思うけれど。